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北海道に憧れ、北海道を愛し、しっかりとたくましく北海道に根を下ろしている人々のドキュメンタリー。
第五回は、サラブレッドの繁殖と育成を実地で学ぶことができる唯一の高校、北海道静内農業高等学校 馬術部にスポットを当てます。
同校の生産科学科(馬科学系列)では軽種馬の繁殖・育成・調教が正課のカリキュラムに盛り込んでいる。
生産馬の勝利という快挙で一躍注目を浴びることになった高校でどんな話が聞けるか楽しみである。
再生にはQuickTimeが必要です。
毎年5月上旬に見事な花を咲かせる日本最長の桜並木でおなじみの二十間道路に隣接した静内農業高等学校へ訪れた。
1978年に開校、現在は食品科学科と生産科学科の2学科を展開している。
アイスクリーム、ヨーグルト、ソフトクリーム、チーズ、パン、野菜ジュースなどのオリジナル食品の開発や、牛・馬の尿から消臭液を作るなど、恵まれた環境と資源を生かした研究活動が行われている。
そして「ホースセラピー」として養護学校の生徒や保育園児に乗馬を教える。
秋には校舎に隣接した二十間道路に三万本のコスモスを植えるボランティア活動も地域の人たちと行うなど、地域社会に根ざした教育を行っている。
同校の教育理念は
「従来の量産重視の農業教育から、生産・加工、商品化、流通を経て、自然環境・リサイクルまで一貫して教えている。
それが環境保全や食の安心が叫ばれる現代社会での農業高校のあるべき姿であると考えている。
農業経営者は生産だけでは不十分。生産者の顔が見える販売方法を考えることや、都会に暮らす人へ農業体験の場を提供したりと、創意工夫で
農業が身近なものになり、いろんなことができる可能性が広がるのではないか。
教育とは教師に教わるばかりではなく、自然や動物に教わり、自分たちがあらゆる生命によって生かされていることを知ることである。」と米田敏也教頭は語る。
農業の重要性、自然の大切さ、生命への感謝を農業を通じ人間教育を学べる高校である。
生徒たちが作ったオリジナルアイスクリームは 搾乳から加工、ラベル付けまで生徒が自分達の手で行い、校内にあるアンテナショップ 「あぐり工房 桜樹(おうじゅ)」で販売している。 これらは起業家の発想を身につける為に、生産・販売・消費までを経験する授業の一貫だ。
生産科学科(馬科学系列)では、授業、部活動で育てた馬をセリに上場される。
馬の世話は、馬科学系列の生徒と馬術部員が愛情をかけ一生懸命育てている。
種付け、セリでの売却、競走馬として送り出すまでを、すべて生徒が担当する。
馬産地ならではのマーケットに直結し、地元産業と密着した授業から生徒は多くを学ぶ。
同校はやる気に溢れる生徒ばかりで、「生産を学びたい」、「馬術をやりたい」と明確な目的意識を持ち全国から進学してくるという。
平成17年2月13日に東京競馬場で行われた新馬戦で生徒たちが育成したユメロマンが初勝利を飾った。
高校産馬が中央競馬で勝利するのは、史上初の快挙として話題を集めた。
不況で低迷する地元軽種馬産業はもちろん、町民も喜びに沸き、希望を生んだ。
同年8月18日にはユメロマンの弟である、サクラホウジュも公営ホッカイドウ旭川競馬の新馬戦で白星デビューを挙げた。
同校に名誉と自信をもたらし、生徒たちの大きな励みとなった。
馬術部顧問の加藤直美先生に厩舎を案内してもらい、馬術部主将小林忍君と藤春淳君に話を伺った。
浦河町出身の藤春君は実家が牧場をやっていて、
最初はいやいや馬の世話を手伝っていたが、だんだん馬の事が好きになりはじめ、乗馬をはじめるようになり馬がさらに好きになった。
兵庫県出身の小林君は小さい頃から父親が競馬観戦をよくしていて、その影響で馬が好きになり、
小学校5年生の頃、父親に乗馬クラブに連れられ馬に興味を持った。
馬の世話は、夏場は早朝5時半から厩舎にきて餌を与える。
放課後、部活動では、夜の7時まで厩舎で過ごす。現在13頭の世話をしている。
「馬を育てていて嬉しい事は、自分の言う事を聞いてくれた時とか、
普段はなついてくれなかった馬が急になついてくれる瞬間が嬉しくて、続けていて良かったといつも思います。」と小林君は話す。
それぞれに個性がある馬たち。
「おとなしい馬から、うるさい馬までいて、うるさい馬だったら蹴ったり噛んだり、
油断したらすぐ怪我にもつながるので、そういった馬に接する時は注意しています。
やっぱり、自分の言う事を聞いてくれたり、おとなしい馬が好きです。」と藤春君。
「馬を手入れしてたりしてたら怒る日もあれば、なついてくる日もあったり、馬に乗っている時も何となく伝わるものがありますね。
馬は自分で体を清潔にしたりすることができないので、人間の時間に合わせるのではなくて、馬の生活にあわせて
馬優先で考えています。馬と接していると馬の気持ちがわかったりします」と話す小林君。
「馬術部に入って最初の頃は毎日が緊張して、先輩方の仕事している所を見て、自分も覚えるようにして
最初の一ヶ月、二ヶ月は結構大変でした。」と振り返る藤春君。
この春彼らは3年生になる。
「やっぱり高校生活最後なんで、部活でも学校生活でも悔いの残らないように頑張りたい。」と卒業までの残り一年の意気込みを語る小林君。
彼らの将来の夢は、
小林君「高校まず卒業したら大学に進学して馬術部に入部しようと思っています。
で、そこからは出来れば乗馬関係の仕事に就きたいなと思っています。」
藤春君「僕はまだ迷っているんですけど、軽種馬の育成牧場で勤めるか、競馬関係の仕事に勤めるか。最終的には、自分の牧場を持ちたいと思います。」
馬場で練習をする部員たちの眼差しには、明日へ希望をもった力が溢れていた。
立派なホースマンになる日が楽しみである。
愛着のある馬をセリに出すと寂しがる生徒はいないのかと、加藤先生に訊ねると
「生徒たちはサラブレッドという競走馬の生産は他の動物の繁殖や飼育と違い、経済動物として認識していて、売れる事はもちろん、売却時の値の高さや、競走馬への道ができるほうが生徒は喜びます。
マーケットでの評価の厳しさを学ぶ事は、将来大きな財産になる」と言う。
一生懸命育て世話をした愛馬の辿る道のりを見守るという愛が生徒たちに感じられた。
人として生きていくうえで、馬から学んだことは生涯を通じ貴重な糧となり、宝となり、馬の成長と共に彼らも成長する。
これからも地域と共に歩み続け、彼らが咲かせる希望の華は二十間道路・桜並木のように満開に咲きほこるであろう。
喜びをわかちあう仲間と出会い 共にサラブレッドに夢を託し明日へ駆ける。