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北海道に憧れ、北海道を愛し、しっかりとたくましく北海道に根を下ろしている人々のドキュメンタリー

白老町の虎杖浜は今ではたらこの加工地として有名になりました。 2月には虎杖浜の前浜で収穫されるスケトウダラを加工し、純国産品のたらことして出荷しています。 今では虎杖浜産の国産たらこは品質が高くブランド化された水産加工品として日本中で食べられています。
今回はそんな白老虎杖浜のたらこ加工工場 竹丸渋谷水産株式会社を経営している、 渋谷 猛社長にお話を伺いました。
インタビューはPodcastingでもご利用いただけます。 詳しくはPodcasthingをご覧下さい。
工場の裏手には大きなトラックヤードがあり、大きな冷凍車が何台も横付け出来るようになっています。 冷凍車で運ばれた材料は外気に触れることなく冷凍庫へ運び込まれます。
仕入れた材料は冷凍庫で-25℃で保存・管理されます。 その後、解凍室に運ばれ、解凍室では室温20℃湿度90%で解凍されます。
解凍されたたらはたらこ漬け器を使って回転させて味が均等になるようにつけ込まれます。 大きな筒がいくつも並んでぐるぐる回っています。
つけ込みが終わったらチルド状態で熟成されます。 厳重に管理され、補完されます。
工場に入るにはエアシューターを通ります。 これで、髪の毛や細かいチリを除去します。 宇宙船にでも乗り込むような雰囲気です。
念入りに手洗いをします。 季節ごとに異なる洗浄殺菌液で手を洗うそうです。 そして、滅菌した使い捨ての手袋をして作業室へ入ります。
作業される方は竹丸渋谷水産オリジナルのエプロンをして作業をします。 エプロンは毎回、洗浄殺菌され、無菌室に補完されています。
加工場ははきれいに整理整頓されていて、食品加工工場というよりは、 テレビCMで見る化学工場の無菌室を思わせます。
この大きな工場全体でHACCP(※注)を取得していることを考えると管理が大変そうだと思いました。
虎杖浜たらこのブランド化に至った経緯などありますか?
はじめはブランド化なんて考えていませんでした。 北海道の片田舎から東京にものを出荷して売ることで我々も漁師さんも豊かになっていこうというのがきっかけです。 海から獲ったものを東京で多くの人に買ってもらうためには、付加価値をつけて売らなければ売れない。 そのためには我々も努力しなければならない。
それでも、日本で一番消費の多い東京で売るために努力することで沢山の人に評価していただきました。 虎杖浜たらことして有名になったのはそれまでの努力の賜物だと思っています。
昨今の食の安全性・信頼性について伺います。 竹丸渋谷水産さんではHACCPを取得していますが、 取得までの経緯を教えてください。
工場は全長150mあるが、その工場全てでHACCPを取得しています。 しかも、全ての項目で満点をもらっています。 評価は8段階あって全て8点をもらっています。 国の検査で満点を出すなんて並大抵の事では出さないと思うんです。 検査員が想像していたレベルを遥かに超えていたから満点をいただけたと思っています。
そのためか、北海道内のHACCPを取得する肉屋や菓子屋など食品加工に関係する業者が見学にきます。 最近では日本だけじゃなく海外からも見学に訪れる業者もいるほどです。
私は日本でHACCPが施行される以前から、食品加工の衛生管理面からHACCPに注目し勉強し、 製造過程に反映してきました。
昭和50年から某大手外食チェーンにタラコスパゲティに使うたらこを年間300kg卸し始めました。 平成元年には100tを卸すようになっていました。 そんな時、たらこを卸しているその外食チェーンから3年以内にたらこの大腸菌をゼロにするように要求されました。
我々としては薬品を使わずに大腸菌をゼロにすることにこだわり、努力を重ねたが、 3年後の平成3年には薬品を使わずに大腸菌をゼロにすることは出来なかった。
大手外食チェーンとの契約は打ち切られ、売り上げの2割を失うことになりました。
魚から卵を取り出した時には大腸菌はゼロなんですが、加工する段階で大腸菌が発生します。 加工の行程にHACCPの考え方を取り入れることで大腸菌をゼロに近づけることが出来たが、 平成3年の段階ではゼロに出来なかった。
その悔しさをバネにさらに勉強を重ね、平成5年〜平成7年の間、 新しい病院の手術室を沢山見学してきました。 工場を大きな手術室と考え、手術室の無菌状態を保つための設備をそのまま工場に導入しました。
平成9年に別海町のいくら加工業者が大腸菌O-157で食中毒を起こし、 東京でいくらもたらこも3ヶ月間全く売れなくなりました。 当初は平成12年に工場を増築する予定だったが、 この事件のようなことが、いくらにも起こってお客さんに迷惑をかけられないという思いから、 予定を繰り上げ、平成10年に工事をHACCPに習う形で増築しました。
それから、多くの方が工場を見学に訪れ、中には保健所の方や道の職員の方々もいました。 そんな関係もあり、HACCP取得をすすめられ、平成15年に取得に致しました。
もちろん、今は薬品を使わず、 無菌のたらこが作れるようになって大手コンビニの生たらこのおにぎりの具に使っていただいています。
工場設備や開発された機械に付いて教えてください。
たらこを漬ける機械のミナト式助子漬自動回転機は私がアイデアを出して開発して完成しました。 この機械は今では多くの工場で使われています。
昔は漁をした船が夜帰ってきて、工場で魚の腹を割いて卵を出し、 漬け込み、満遍なく漬けるために一晩中手でたらこを返さなけばなりませんでした。 取り出した卵は1時間でも1分でも早く漬けないと等級が下がるため、 夜中じゅうずっとその作業をくり返さなければなりませんでした。
私が漁協や漁師との付き合いで夜に飲み歩いて家に帰ると、 妻は夜な夜なたらこを漬けていました。
ある日妻から「私ばかり夜も寝ないでたらこ漬けて、 あんたは一杯飲んでこりゃこりゃやって!」と言われ、 「よしよし、もう1年我慢してけれ、オレが機械作ってやるから、 かあさんが晩にスイッチ入れたら朝にはちゃんとたらこ出来てるようにするから、 心配するな。」と言ってしまってから、 朝から晩まで365日顔を合わせる度に「いつ機械作るんだ!」と言われ、 どうしたって作るしかなくなって、作りました。
解凍設備もすばらしいですね。
今、工場に設置している解凍器も私が考案して開発しました。 冷凍機の会社、機械を作る会社、電気設備の会社、壁面パネルの会社に声をかけ、 アイディアを出しつくりあげました。
冷凍された状態で仕入れたたらこを解凍するには、 室温を20℃に保ち、湿度90%以上にします。 その状態は細菌が一番繁殖しやすい環境になるため、 一回解凍作業をするたびに室内を100℃のスチームで殺菌します。 解凍後は室温を-5℃まで下げチルド室として機能します。
室内に設置する機械類は、湿度100%に耐えられるものでなければなりません。 例えば水の中に全部浸けても動く扇風機出なければそこでは使えません。 温度の面でも、-5℃〜100℃まで気温差があるため、それに耐えられる機械でなければ使い物になりません。 また部屋の壁も外に温度を逃がさないように作らなければなりません。 室内はスチームで100℃になった時に外の廊下に熱が漏れて人が通れなくなっては困ります。 逆にチルド状態の-5℃を保つ必要もあるわけです。
そのような解凍室を作るために日本中の会社に声をかけ、 開発しました。 その甲斐あって薬品を一切使わずに無菌状態のたらこを作ることが出来るようになりました。
お時間ありがとうございました。
Hazard(危険)Analysis(分析)and Critical Control Points(重要管理点)を略したもので、 食品の製造工程において発生する問題を分析し、その問題を抑える方法を決め、 継続的にチェックすることで、安全な食品を作ろうとするものです。
元は1960年代にアメリカで宇宙食の安全性を確保するために開発された食品の衛生管理方法でした。 今では世界各国で取り入てられています。
日本では1996年5月に施行され、1998年5月から5年間、 HACCPを導入する企業へ低利融資や税制上の優遇処置が実施され、 2004年にはさらに5年間延長されることが決まりました。